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詩人 坂村真民さんの著書『花ひらく 心ひらく 道ひらく』の一節です。
私たちは日々の生活の中で、「幸せ」というものをどこか外側に求めがちです。経済的に豊かであることや、成功を収めること、人から認められること、美味しいものを食べたり、素敵な場所に旅行したりすること。これらは確かに私たちを幸せにしてくれる要素ではありますが、それだけでは本当の幸せとは言えません。
なぜなら、それらはすべて外的な要因であり、一時的な満足感を与えてくれるものの、持続するとは限らないからです。
例えば、お金がたくさんあれば幸せだと考えていた人が、実際に大金を手に入れたとしても、それによって心が満たされるとは限りません。むしろ、新たな不安や欲望が生まれ、さらに多くを求めてしまうこともあります。
同じように、仕事で成功して名声を得たとしても、それが本当の幸せに直結するわけではありません。ある人は成功のプレッシャーに苦しみ、ある人は他人と比較することで逆に満たされない気持ちを抱えることもあります。
このように、外的な条件だけで幸せを決めようとすると、どうしても「もっと」「まだ足りない」と思ってしまい、真の満足感を得ることが難しくなってしまいます。
それでは、幸せとはどこからくるのか。この言葉が示しているように、幸せは「自分の心」から生まれるものなのです。つまり、幸せとは何か特別な条件を満たしたときに外から与えられるものではなく、自分自身の心の持ちようによって感じ取るものなのです。
何気ない日常の中に幸せを見出せる人は、どんな状況であっても幸福感を得ることができます。美しい夕焼けを見て感動したり、家族や友人との何気ない会話の中で温かさを感じたり、ちょっとした親切を受けて心がほっこりしたり。そういった小さな幸せを感じ取る心を持っている人は、特別な成功や富がなくても、満ち足りた人生を送ることができるのです。
また、この考え方は仏教の教えとも通じるものがあります。仏教では、「執着」を手放すことが幸せにつながると説かれています。私たちは、「もっとお金が欲しい」「もっと認められたい」「もっと良い環境にいたい」といった欲望を持っていますが、これらの欲望が強くなるほど、手に入らないときに不満を感じ、手に入ってもさらに上を求めてしまうという終わりのないサイクルに陥ります。
しかし、もし「今あるもので十分だ」「すでに自分は満たされている」と感じることができれば、心は自然と穏やかになり、幸福を感じることができるのです。
このことは、人生の困難な局面においても当てはまります。誰しも、思い通りにならないことや、つらい出来事を経験することがあります。しかし、そのようなときでも、心の持ち方一つで、状況の捉え方は大きく変わります。
例えば、失敗をしたときに、「自分はダメだ」と落ち込むのではなく、「この経験から何かを学べる」と考えられる人は、そこに成長の機会を見出すことができます。あるいは、大きな挫折を味わったときに、「自分は不幸だ」と思うのではなく、「この経験があったからこそ、今の自分がある」と受け止めることができれば、心は前向きになり、幸せを感じやすくなります。
また、人間関係においても、「幸せは自分の心からくる」という考え方は重要です。他人の言動や態度に左右されるのではなく、自分の心のあり方を整えることで、人との関係もより穏やかで満たされたものになります。
人からの評価を気にしすぎると、「もっと認められたい」「もっと好かれたい」と思い、その期待が満たされなかったときに不満を感じることになります。ですが、「自分は自分のままでいい」と思えれば、他人の評価に一喜一憂することなく、自分らしく生きることができます。そして、そうした心の安定が、結果的に周囲との良い関係を築くことにもつながるでしょう。
私たちは常に「もっと良いもの」「もっと幸せになれる方法」を探し求めています。その答えを外に探すのではなく、自分の心の中に目を向けることで、すでに持っている幸せに気づくことができるのです。どんなに物質的に恵まれていても、心が満たされていなければ幸せにはなれません。
一方で、たとえ大きな成功を収めていなくても、日々の小さな幸せを大切にし、感謝の気持ちを持って生きることができれば、人生は豊かで満ち足りたものになるのです。
幸せとは特定の条件を満たしたときに手に入るものではなく、私たちの心の持ち方によって決まるものです。この言葉は、私たちに「今ここにある幸せに気づくことの大切さ」を教えてくれているのです。